
生きものとの近さ
大きな水槽や大型の生きものは置けない、小さな館です。そのかわり、大きな水族館では脇役になりがちな小さな生きものを主役にしています。展示している生きものの多くは、館長が地元の海で採集したもの、漁師さんから譲り受けたもの。すぐ目の前で、一匹ずつじっくり見られます。
ABOUT
INTRODUCTION
くにみクラゲ公民館は、福井市の越前海岸・国見地区にある体験学習施設です。使われなくなった旧国見公民館を再活用し、2022年4月に開館しました。
海は、建物から目と鼻の先。館の目の前にある漁港が、そのまま体験のフィールドになります。
海や生きものを見る、見つける、触れる、作る、記録する。地域の子どもたち、週末に訪れるご家族、学習に訪れる学校の子どもたちが、ここで同じ海を相手にそれぞれの発見を重ねています。




STORY
館長の田中俊之は、子どもの頃から動物が好きで、飼育係になることを夢見ていました。その夢を叶えて水族館の飼育員になり、越前松島水族館などで働きました。はじめて担当した生きものは、クラゲです。この館の展示の主役がクラゲなのは、その最初の縁を大切にしているからです。
水族館の職員として、そしてクラゲ専門の飼育販売業者として、海の生きものと向き合ってきた時間は、開館までに約15年。2015年には日本海側の海でクラゲを採取し、全国の水族館などへ届ける「クラゲ専門店 Atolla(アトゥーラ)」を、2019年には福井駅前に「クラゲbar」を開きました。
一方で、父の急逝をきっかけに、家業を継ぐため飼育員の仕事を離れた時期もあります。家業が落ち着いたころ、心に湧いてきたのは、もう一度「生きものと関わる仕事がしたい」という思いでした。
館長は開館の前から、地域の小学校に出向いて環境学習の授業を行ってきました。そこで感じていたのは、子どもたちが環境問題に関心を持つきっかけが、地域の中にそもそも多くないということ。仕事で県外の海を見て、生きものの豊かさや水の透明さなど、故郷の海の素晴らしさをあらためて実感したことも、この思いにつながっています。
地元の子どもたちに、自分の住む地域に誇りを持ってほしい。生きものを通して、海や環境に興味を持ってほしい。そして、地域に開かれた場所をつくり、海岸一帯ににぎわいを生み出したい。その思いから、越前海岸の国見地区で、使われなくなった公民館を再活用することを決めました。
2021年に挑戦したクラウドファンディングには、200人から支援が集まりました。同じ年の12月に国見地区の方限定でプレオープンし、2022年4月に開館しています。
開館当初は、生きものの展示が中心でした。「子どもたちにもっと生き物に触れる機会をつくりたい」と体験企画を重ねるうちに、評判が口コミで広がり、今では体験そのものが館の代名詞のようになっています。
生きものに触れる子どもたちの笑顔を見てきたなかで、館長は「この子たちにきちんと未来をつなげていかなければいけない」と強く感じるようになったといいます。海や自然での体験を通して、子どもたちの好奇心を育てること。それが自分の使命だと、館長は考えています。
HISTORY
CONCEPT
「海辺の研究基地」。それが、くにみクラゲ公民館の考え方です。
研究といっても、堅い勉強をする場所ではありません。教育と遊びのちょうど中間にあるのが、ここでの体験です。正解を先に教えるのではなく、子どもが自分で見つけ、自分で考え、それを人に伝えるところまでを大切にしています。
海を見ることから始まり、ひとつの発見が次の興味へとつながっていく。この館でできる体験は、次の8つの段階でひと続きになっています。

01
2階の工作室の窓の向こうは、日本海です。

02
目の前の漁港で、網を手に生きものを探します。

03
スタッフと一緒に、生きものに触れてみます。

04
白いバットや小さな水槽で、細部までじっくり見ます。

05
浜で見つかる素材を使って、作品をつくります。

06
わかったことを、解説パネルにまとめます。

07
スタッフに尋ねると、名前や暮らしぶりがわかります。

08
キッズクラブで、仲間と続けて学びます。
CLOSENESS
大きな水族館にはない、3つの近さ。

大きな水槽や大型の生きものは置けない、小さな館です。そのかわり、大きな水族館では脇役になりがちな小さな生きものを主役にしています。展示している生きものの多くは、館長が地元の海で採集したもの、漁師さんから譲り受けたもの。すぐ目の前で、一匹ずつじっくり見られます。

もともと公民館だった小さな館だからこそ、訪れる一人ひとりとの関わりを大切にしています。常連の子どもが捕まえたキイロウミウシが展示され、名前を書いたパネルの絵もその子が描いた、ということもありました。

海は、建物から目と鼻の先。2階の工作室からは日本海が一望できます。浜で見つけたものを、その海を眺めながら作品に仕上げられるのは、この場所ならではです。
FLOOR GUIDE

越前海岸のクラゲを中心に展示する部屋です。作家によるクラゲランプが、部屋をやわらかく照らしています。

色も形もさまざまなウミウシを展示しています。来館者や常連の子どもが見つけて持ち込んだウミウシが並ぶこともあります。

小さな魚やカニ、タコなど、越前海岸の生きものを小さな水槽で展示しています。

地元・国見小学校の子どもたちが捕まえた生きものを展示する専用の水槽です。館内には、子どもたちが作った解説パネルも並んでいます。

日本海を一望できる工作室です。海の素材を使った工作が、無料で楽しめます(入館料のみ)。

越前海岸の12種類のクラゲをかたどったアクリルキーホルダー(800円)や、クラゲTシャツ(3,500円)など、オリジナルグッズを販売しています。オンラインショップでもお求めいただけます。
COMMUNITY
福井市の美山中学校、円山小学校、地元の国見小学校で課外授業を行いました。テーマは、各校の先生の要望を聞きながら一緒に組み立てています。福井市の春山小学校には2年続けて来館いただき、三重県の高校生32名の研究旅行も受け入れました。
学童保育やこども園には、毎月出張してワークショップや生きもの探しを行っています。地元・国見地区の子ども会の版画教室には、モデルとなる生きものを提供しました。
福井市自然史博物館との観察会、福井大学附属特別支援学校の生徒さんが企画・制作した商品の館内販売など、連携の輪も広がっています。越前町で開かれる「ウミウシ王国 in 越前」には、2022年から毎年出展しています。
掲載:福井新聞(2024年5月)/月刊fu(2026年9月号)/福井県観光公式サイト「ふくいドットコム」/福井市観光公式サイト「ふくいろ」



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